そこに桃の木がある
この家が最後と信じているのにまた足を滑らしていく 今度遠い街へ行くことになる何もかも捨てていくつもり 犬猫病院の上のアパート逃げ込んでからもう十二年 強い人だね僕からありがとう
中古のおこたで幾度冬を越す 暑い日だけれど扇風機一つさ 枕を裏返すととても冷たくてそれを楽しみに眠りを忘れる 学校の帰り顔を腫らしてもううんざり 逃げれないよね どこへ行っても多分同じ 強くならなくちゃ
二十三万で小さな車をこんなにあるのに一番ぼろくて ぼろぼろの車は持ち主二人に同情してかなよく走ってくれるよ 海の帰り雨の中で猫抱えて おまえもぼろぼろになれと しゃくなもんだな手の中で眠る
七時になるとヒールの音が聞こえてきたから猫がとんでく すれたドアを持ち上げ横にずらして くたくたの体が二つ揃うと 家を買うのよ大きな家を 逃げるのとは違うはじめてのマイホーム 遠くで聞こえる四人の声いろりを囲んで何か話す
庭には桃の木十九年前長男がうまれた日植えた木がある 返らない日々を思い出してこんなにセンチになってく僕がいる 幸せになるとき幸せに逆らい不幸に近づいた人がいたけど 泣き虫だった小さな子供は今どうにか大人になってく マンションの五階に幸せを築いたわがままだけれど強い人がいる 幸せになるとき幸せに逆らい不幸に近づいた人がいる
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